世界のトップギターメーカーであるFenderですが、その第一号となったモデルはテレキャスターです。ロックの歴史に欠かせないギターで、今もなお多くのギタリストに愛用されています。
Fenderが初めて作ったエレキギター・テレキャスターの魅力に迫ります。
この記事のポイント
テレキャスターとは?
エレキギターのスタンダードであるテレキャスター。シンプルで無駄がありませんので、ギタリストの腕が試されるギターと言えるでしょう。
テレキャスターの歴史やスペック、愛用するギタリストをご紹介します。
テレキャスターの歴史
ラジオ修理会社を経営していたFender。そんなFenderは事業を広げるため、1950年からエレキギターの製造に着手しました。
エレキギターの第一号モデルはエスクワイヤーと名付けられ、これこそが後のテレキャスターになります。
エスクワイヤーはリアにシングルピックアップ1発というシンプルな構成でしたが、その後にリアとフロントにピックアップを搭載したモデルが誕生。これこそ現在のテレキャスター誕生の瞬間です。
当初はブロードキャスターという名前で販売されていましたが、それはなぜなのでしょうか。それはGretschがスネアドラムの名称として、「ブロードキャスター」を登録商標にしていたからなのです。
スネアドラムとエレキギターではありますが、お互い楽器。トラブルを避けるためにFenderは名称変更することに。そこでテレキャスターと名付けられたのです。これだけのマイナーチェンジを経てテレキャスターは誕生しました。
このエピソードから数十年を経て、GretschはFenderの傘下になりました。
テレキャスターのスペック
長年にわたってロックサウンドを支えてきたテレキャスターですが、随所にさまざまなこだわりが見られます。
テレキャスターのスペックをご紹介します。
ボディ
テレキャスターはFenderのファーストモデルでありながら、現在まで多くのギタリストを魅了しました。その理由はギターの常識を覆したボディにあります。
大量生産に向いたデザイン
テレキャスターが大量生産できた秘密はデザインです。従来のエレキギター・アコースティックギターとはかけ離れた発想があります。
これまでのギターはホロウボディが一般的だったため、製造に大きな手間がかかっていました。さらにネックとボディのジョイントも大量生産に不向きだったのです。 テレキャスターは完全なソリッドボディとなっており、ボディの表面も加工がされていません。さらにネックとボディはボルトオンによってジョイントされているため、多くの手間が省略できたのです。
ホロウボディからソリッドボディへの変更、ボルトオンによるジョイント方式などの工夫によってFenderはテレキャスターの大量生産に成功しました。
そしてこれまでのホロウボディのギターは、ボディ内を鳴らすことで豊かなミドルを出していました。しかしテレキャスターはソリッドボディですので、そういった鳴りは一切ありません。これによってミドルが下がってしまいますが、逆にトゥワンギーな(ジャキッとした)サウンドが出るようになったのです。 このサウンドはコードストロークやカッティングにマッチしており、テレキャスターのトレードマークとなりました。
テレキャスターのストロークは、弦の一本一本から放たれるオタマジャクシがはっきりと聴こえますよね!これはテレキャスターにしか出せません。
コストカットで安価に
テレキャスターはさまざまな部分でコストカットが行われています。特に弦の裏通しは大きなコストカットになりました。これによってテールピースを取り付ける必要が無くなり、なおかつ弦の振動を直接ボディに届けられるのです。
テレキャスターは大量生産やコストカットなど、合理性を追求したギターです。こういった合理的なギターは大抵失敗するのですが、そのサウンドによってたちまち人気ギターとなりました。
テレキャスターはレオ・フェンダーと、レオの相棒であるジョージ・フラートンによって設計されました。この2人は最終的なサウンドを想定して設計したのでしょうか?それとも合理性を追求した結界、偶然あのサウンドが生まれたのでしょうか?気になるところです。
レオ・フェンダーってギター弾けなかったらしいですよね。でもエレキギターの父としてリスペクトすべき存在です。
ピックアップ
テレキャスターは基本的にリアとフロントにシングルピックアップが搭載されています。リアはブリッジのプレートにネジ止めされていますが、そこからアースを取ることが可能。これはアースの配線を省くメリットになります。
テレキャスターのフロントの甘いトーンは特徴的ですが、そこにパワー不足を感じるギタリストも少なくありません。そこで定番の改造となっているのが、P-90への換装です。
P-90コイルのターン数を増やしたシングルピックアップの一種で、ノイジーではあるものの荒々しいワイルドなサウンドが特徴。これはリードプレイにうってつけです。
友人がP-90に換装したテレキャスを持っていたので、弾かせてもらったことがあります。じゃじゃ馬でヤンチャなサウンドでありながら、太さとセクシーさを感じるトーンでした。本当に気持ち良かったですね。
テレキャスターの種類
テレキャスターにはスタンダードなモデルだけでなく、さまざまなモデルがリリースされています。どれも個性がありますので、テレキャスター好きにとって必見でしょう。
テレキャスター・シンライン
1968年に登場したテレキャスター・シンラインは人気のモデルです。最大の特徴はボディ内部の空洞化でしょう。このホロウボディによって丸みを帯びたマイルドなトーンになっています。 またシンラインはシングル2基のモデルと、ハムバッカーが2基搭載されているモデルがあります。このハムバッカーはワイドレンジハムと呼ばれるもので、ブライトで透明感のあるサウンドが特徴。
このワイドレンジハムを開発したのはエンジニアのセス・ラヴァー。セス・ラヴァーはあのPAFの生みの親でもあります。
テレキャスター・カスタム
テレキャスター・カスタムは1972年に発売されました。カスタムの最大の特徴はピックアップとノブの構成でしょう。リアにシングル、フロントにハムバッカーを搭載しており、さらに2ボリューム、2トーンという構成。
テレキャスター・カスタムは、明らかにGibsonのレス・ポールを意識して設計されていると考えられます。ピックアップ・セレクターも3WAYのトグルスイッチで、位置もレス・ポールと同じですから。
テレキャスター・カスタムのサウンドですが、テレキャスターならではのジャキジャキ感がありながら、ハムバッカーならではの太さもあります。これはレス・ポールの太さとは一味違うサウンドです。
一般的なテレキャスターはバッキングで活躍していますが、テレキャスター・カスタムはリードプレイに向いています。
テレキャスター・デラックス
テレキャスター・デラックスは、テレキャスター・カスタムと同様に1972年に発売されました。
テレキャスター・デラックスの最大の特徴はヘッドでしょう。
テレキャスター・デラックスはラージヘッドのストラトキャスターと同じ形状になっていますので、パッと見ると不思議な感覚になってしまいます。これはストラトキャスターのパーツを流用しているんです。
ヘッドに重量を持たせることでローミッドが強調されるので、テレキャスター・デラックスのサウンドはパワフル!
さらにボディ裏はストラトキャスターのようなコンター加工があり、ブリッジもストラトキャスターのような6連サドルが採用されています。
テレキャスター・デラックスはテレキャスターでありながら、レスポールとストラトキャスターの要素が含んだギターなのです。
参考:ストラトキャスターの基本スペックと歴史を徹底解説!ボディ・ネック・ヘッドの特徴は?
参考:レスポールのスペックと有名ギタリストを徹底解説!サウンドを決めるポイントやネックが折れやすい理由
テレキャスターを愛用するギタリスト
テレキャスターはロックの歴史に欠かせないエレキギターですが、これまでどのようなギタリストが使っていたのでしょうか。テレキャスターを愛用したギタリストをご紹介します。
キース・リチャーズ
世界で最も有名なテレキャスター・プレイヤーといえば、Rolling Stonesのキース・リチャーズでしょう。
“ミカウバー”と名付けられたバタースコッチのテレキャスターは、キースのトレードマークになっています。 このミカウバーは6弦が張られておらず、6弦のサドルも取り外されています。さらにオープンGにチューニングされているので、5弦からG-D-G-B-Dです。『Start me up』のリフはオープンGチューニングならではのフレーズですね。
ジミー・ペイジ
レスポールのイメージが強いLed Zeppelinのジミー・ペイジですが、テレキャスターも使用しています。名曲『天国への階段』のギターソロはテレキャスターによるものです。
ジミー・ペイジはレスポールのイメージが強いですが、テレキャスターを弾く機会も多いギタリストです。
たとえば、ジミー・ペイジはBベンダーと呼ばれる機構を内蔵したテレキャスターも使用しています。これはヘッド側のストラップピンと、2弦がスプリングでつながったシステム。これによってネックをグイッと下げると2弦が引っ張られ、ピッチを上げることができます。
レギュラーチューニングでしたら2弦の音はBですが、BベンダーによってC#(1音上)まで上げることが可能。ジミー・ペイジはこういったトリッキーなプレイを積極的に取り入れるギタリストですね。
ちなみに、ギター雑誌の付録DVDで、ジミー・ペイジ完コピギタリストのMr.JimmyがBベンダーを実演していた記憶があります。いや、同じ完コピギタリストのジミー桜井だったかも…。ペイジの完コピはこの2人が有名なんですよね。
ロイ・ブキャナン
僕にとってテレキャスターといえばロイ・ブキャナンです!
ロイのギターは非常にトレブリーなサウンドでありながら、ボリュームやピッキングを完璧にコントロールして甘いトーンを出していました。特殊奏法の達人でもあり、ピッキング・ハーモニクスやボリューム奏法によって、歌うようなプレイをするんです。
ギタリストへの影響力も非常に強く、ジェフ・ベックの『哀しみの恋人達』はロイ・ブキャナンに捧げられた曲。エリック・クラプトンはロイの大ファンで、ツアーの移動中はロイのブートレッグをずっと聴いていたそうです。さらにブライアン・ジョーンズ脱退後のRolling Stonesから、ロイは正式に加入のオファーを受けています。
「お互いのことを考えて止めておこう」と、ロイはRolling Stonesへの加入を辞退しました。
ロイの楽曲ではギラギラとしたテレキャスターのサウンドが楽しめますが、代表曲は『メシアが再び』でしょう。ゲイリー・ムーアもカバーした泣きの名曲です。 極上の表現力を味わうなら、ライブアルバム『Live Stock』に収録された『I`m Evil』がオススメ。スピーカーから飛び出してくるようなテレキャスター・サウンドで、粘りのあるチョーキング、歌うようなボリューム奏法が堪能できます。
僕はライブで『メシアが再び』をカバーしたことがあります。僕にとってテレキャスター=ロイ・ブキャナン!大好きなギタリストです!
テレキャスターの買取価格
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Fenderが初めて作ったエレキギターのテレキャスターは世界中に多くのファンがいます。そのため、中古テレキャスターの需要は少なくありません。
高額査定実績も多い楽器の買取屋さんでは、テレキャスターが10万円以上になった事例も。詳しくは「【相場・査定例】Fender(フェンダー)テレキャスターの買取価格!高額査定が期待できるテレキャスターのモデル」のページをご覧ください。