ディストーションといえば?その答えはひとつ。BOSS MT-2、メタルゾーンですよ。
メタルギタリストならメタルゾーンには誰もが一度はお世話になっているはず。僕もその1人ですが、十数年ぶりにメタルゾーンに火を入れてみました!そこでたどり着いた結論をお楽しみください!
この記事のポイント
メタルゾーンとは?
メタルギタリストであれば誰もがご存知のメタルゾーン。ゴリゴリのディストーションなのに、なぜかメタルギタリスト以外にも広く知られています。これだけ知名度の高いメタルゾーンとはどんなエフェクターなのでしょうか?
メタルゾーンの特徴
メタルゾーンの名前はご存知でも、実際に使ったことのないギタリストもいることでしょう。そのサウンドの特徴はもちろんのこと、異常な人気の高さについても僕なりに考えてみました。
メタルゾーンのイメージ
BOSSエフェクターの中でも、メタルゾーンは異端児的存在ですね。
真っ黒なボディにオレンジの「Metal Zone」の文字。日本人にとって黒とオレンジってジャイアンツカラーだと思うんですけど、ギタリストにとってはメタルゾーンですよね。91年にBOSSから発売されました。メタルゾーンは30年近い歴史を持つロングセラーのエフェクターなんです。
BOSSといえばエフェクターメーカーのトップで、世界中のギタリストから支持されています。
- 平均以上の性能
- コスパの良さ
- 使いやすいフットスイッチ
- 優等生
愛される理由はいくつも挙げられるでしょう。
でもそんな意見をすべてひっくり返すのがメタルゾーンなんです。
- とにかく歪んでニュアンスが出ない
- ノイズが大きい
- すぐにハウる
- イコライザーのクセが強い
- 名前がダサい
メタルゾーンはBOSSのブランドイメージからほど遠いんですよね。でも現在も製造されていますし、新規のファンも増えている不思議な魅力を持つエフェクターなんです。
ハイゲイン黎明期に誕生
現在も人気の高いモダンなハイゲインサウンドは、90年代前半に誕生しました。メタルゾーンが誕生したのも同時期です。
メタルゾーンは91年発売ですが、その時代はどのような音楽シーンだったのでしょうか。
90年にPANTERAがブレイク。91年にはMETALLICAがブラックアルバムをリリースし、同時期にMeshuggahがデビュー。94年にはKoЯnが1stアルバムをリリースしています。
つまり90年代前半の音楽シーンは、急激にハイゲインが求められた時代だったんです。そのニーズに応えるように、92年にはハイゲインアンプのツートップであるPaveyの5150、Mesa/BoogieのRectifierが発売されました。どちらも未だに根強い人気がありますよね。
メタルゾーンは91年発売ですので、時代にマッチしたエフェクターと言えるでしょう。しかしそのクセの強さもあって、「メタルゾーンをメインの歪みに使っています!」というギタリストはほぼ知りません。
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メタルゾーンの人気の理由
数あるBOSSエフェクターの中でも異端児的存在のメタルゾーン。しかしネット上では未だに根強いファンの多いエフェクターです。それではなぜ人気なのでしょうか。僕なりに考えてみました。あくまで僕が勝手に考えたことですからね!
アラフォー世代の共通体験
僕と同世代のメタルギタリストなら分かってもらえるはず!
僕のようなアラフォーのメタルギタリストの大半は、学生時代にメタルゾーンのお世話になったことでしょう。メタルギターはとにかく歪みが命なんですよ。でも当時のエフェクターじゃプロのような歪みは出せませんでした。
「今回のアルバムのギターは全てアンプで歪ませたよ!」ヤングギターのインタビューを読むと、一流ギタリストの誰もがそう話していました。でも学生の僕にとって5150やRectifierなんて夢のまた夢。仮に買ったとしても、スタジオやライブハウスへ運ぶ手段がありません。
「ハイゲインアンプみたいなゴリゴリの音は出せないものか…」そんなギターキッズに手を差し伸べたのがメタルゾーンなんです。「エフェクターでゴリゴリの音が出せる!」その噂を信じて、メタルギターキッズはお年玉を握りしめて楽器店へ走りました。
「うおぉぉ!ひ、歪むぅ!」
本当に嬉しかったものです。
でも基本的にシャリシャリの音なんで、バンドで合わせるとメタルゾーンの音はかき消されて全然抜けない…。結局メンバーから「お前のギターが全然聞こえないんだよ!」と怒られ、メタルゾーンは戦力外通告に…。
アラフォーメタルギタリストにとって、これはあるあるエピソードですよね。同年代が集まると、子どものころに夢中になったアニメやゲームの話題で盛り上がりますよね?共通体験のエピソードトークって楽しいんですよ。だからメタルギタリスト同士でメタルゾーンの話題は尽きないんです。レトロゲームでいう『たけしの挑戦状』、『スペランカー』みたいなポジションだと思うんですよね。
そして「おっさんギタリストがやたらとメタルゾーンの話をしているけど、どんなエフェクターなんだろう?」と興味を持つ若いギタリストもいます。メタルギタリストはオタク気質ありますから。だからメタルゾーンは年代を超えて愛されているんだと思います。
メタルゾーンはクソゲーなのか?
※以下、シュウジさんの私見となります。ご了承ください。
先ほど「メタルゾーンはレトロゲームの『たけしの挑戦状』、『スペランカー』みたいなポジション」と表現しましたが、僕は恐ろしい事実に気づいてしまいました。
どちらもクソゲーと呼ばれるゲームですが、未だに熱狂的なファンがいます。両タイトルを知るコアな10代のゲーマーもいるでしょう。これってメタルゾーンと同じではないでしょうか?
『たけしの挑戦状』は2017年にスマホアプリ版がリリース、『スペランカー』は2015年にPS4で続編がリリースされています。もちろんこれもメタルゾーンと共通しているんです…。2018年には技 WAZA CRAFTシリーズから、カスタムされたメタルゾーンが発売されているんですから!
記事を書きながら僕はぼんやりと「メタルゾーンってクソゲーの愛され方に似てるなぁ」と思っていました。そこで久しぶりに『たけしの挑戦状』と『スペランカー』について調べたら、この事実に気づいたんですよ!
だから僕は「メタルゾーン=愛されクソゲー説」を唱えたい!
最後に買ったハードはPS3なので、ゲームのことは全然知らないんですけどね…
ネットで人気の理由
ネットでメタルゾーンの記事を見ると、思わずチェックしたくなります!
メタルゾーンはネット上で高い人気があります。ローマ字読みで“メタゾネ”なんて呼ばれてますよね。それではなぜ人気があるんでしょうか。
メタルってアニソンやゲームミュージックとか、オタク系音楽のサウンドやコード進行と相性抜群。古いですけど、アニメタルのブレイクの理由はこれです。ネットって現代人の生活の一部ですけど、やっぱりオタクカルチャーのフィールドですよね?それを考えるとメタルとネットって相性が良いんです。
メタルゾーンは良くも悪くもメタルギターのアイコン。ネット上でも人気になるのも自然な流れだと思うんですよね。
メタルゾーンのMOD・改造
MODは沼。だからこそ面白いんですけどね。
これだけ愛されているメタルゾーンですから、中にはトコトンまで追求するガチ勢もいるんです。その代表がMOD(モッド・改造)。これはモディファイの略で、つまりメタルゾーンを改造することです。
メタルゾーンのMODで定番となっているのはDiezel MODとBogner MODでしょう。DiezelのVH4とBognerのEcstasyを目指して編み出されたものです。
まずはDiezel Modから。
次にBogner Modを紹介。
実際に使ったことはないんですがサンプルを聴くと、どちらのMODもブーミーになりがちなミドルをスッキリさせています。ネット上にMOD情報が出回っているので、自己責任でチャレンジしてはいかがでしょう。
このご時世ですからスマホのアンプシミュレーター・アプリを使えば、DiezelやBognerに近い音は出せるんです。でもMODの意味ってそこじゃないんですよ。そこまでしゃぶり尽くすことに意味があるんです!
またエフェクタービルダーもメタルゾーンのオリジナルMODをしています。KeeleyによるMODはTwilight Zoneと名付けられています。ネット上では“トワゾネ”と呼ばれることも。数多くのMODを手掛けるweedもメタルゾーンの改造をしています。
You TubeにはオリジナルのMOD動画が多数アップされているので、興味のある方はチェックしましょう。ツマミやスイッチを追加した、魔改造メタルゾーンばかりで面白いですよ。
メタルゾーンの音作り
メタルゾーンの音作りについて紹介します。
各ツマミの操作
メタルゾーンにはさまざまなツマミがありますが、2軸式という特殊なツマミもあります。ビギナーにとって分かりにくいので、それぞれのツマミの使い方を解説いたしましょう。
LEVEL
メタルゾーンはLEVELを上げても歪みます!
LEVELは大半のエフェクターにあるツマミで、オンにした状態の音量を決めます。LEVELの調整がとれていないと、オン・オフのボリュームのバランスが崩れてしまうので、音量を確認しながら操作してください。
また歪み系のエフェクターのLEVELは、極端に上げてしまうと音が余計に歪んでしまいます。特にメタルゾーンの場合は少し上げるだけで歪んでしまうので、調整がシビアですね。サウンドを変えずにボリュームだけを上げたいのであれば、アンプのボリュームを上げましょう。
HIGH、LOW
HIGHとLOWは2軸式になっており、上がHIGH、下がLOWです。このツマミはどちらもブーストとカットなので注意しましょう。ツマミ12時でフラットな状態で、右に回すとブースト、左に回すとカットになります。
ほかのエフェクターやアンプのイコライザーのような感覚で使ってしまうと、思ったように音が作れません。でもそれぞれの帯域の調整ができるので、より自分の求める音作りができます。
MIDDLE、MID FREQ
パライコ(パラメトリック・イコライザ)になっているんです。
上がMIDDLEで、これもブーストとカットになっています。下はMID FREQなんですが、この使い方が難しいんですよね。これは帯域の場所を調整するツマミです。200Hz~5kHzの間で調整が可能で、これによって自分の求める帯域のブーストとカットができます。
でもいくら理屈を聞かされてもピンと来ないと思いますので、実際に色々操作して感覚を掴む方が早いと思います。
メタルゾーンのパライコは「習うより慣れろ」です。これを言ったら元も子もないんですけど…
DIST
これは歪の量を決めます。エフェクターによってはGAINやDRIVEと書かれていることもありますね。しかしメタルゾーンはとにかく歪みますので、まずは最小の歪みから徐々に上げましょう。
ちなみにメタルゾーンはDISTが完全にゼロの状態でも少し歪みます。メタルゾーンがいかに歪むエフェクターであるか分かるでしょう。
メタルゾーンとJC120で勝負!
メタルゾーン、JC120、EMG81の乗ったギター。このシチュエーションで僕なりに音作りを考えてみました。
JC120のTREBLEは10時半、MIDDLEは1時半、BASSは10時半。これが僕の中でJC120のフラットなんですよね。リバーブは1時まで上げて硬めのサウンドを中和。ブライトスイッチはオフです。
メタルサウンド
メタルですので歪みが命。メタルゾーンはLEVELとDISTのどちらを上げても歪みますが、それぞれ歪の質が異なります。
僕はLEVEL12時、DIST1時くらいですね。これより上げてしまうとバリバリした音になって使いづらいです。
HIGHは12時でフラットの状態に。JC120がそもそもトレブリーなので、エフェクター側でHIGHを上げると急激にチープな音になるんです。LOWは3時くらい。これでブリッジミュートのヘヴィさが出ます。これ以上は低音が暴れてタイトな刻みが難しいです。
MID FREQは12時でMIDDLEは3時。メタルサウンドってミドルカットのイメージがありますけど、それでは僕的に破壊力不足なんです。ミドルを上げて適度にムチムチさせた方が、頭を殴られたような破壊力になると思います。
リードプレイでもチョーキングに粘り気が出て気持ち良いですよ。ジェントのようにズギュンとした音を作るなら、MID FREQを少し調整してください。
クランチ
爽やかなギターロックをするなら?まずはディストーションの歪みではなく、オーバードライブの歪みを目指すことでしょう。LEVELは10時、DISTはチョコっと上げてください。これで十分です。
HIGHは12時半、LOWは2時。HIGHを上げすぎるとディストーションになっちゃうんですよね。MIDDLEは1時、MID FREQは11時。ジャキジャキ感を残しつつ、ある程度のパワーを目指しました。
でもこのセッティングでもディストーションの音なんですよ。最後のポイントはギター本体のボリュームを下げることですね。これで割とクリスピーなオーバードライブサウンドになります。特にEMGはパワーがあるので、音を聞きながらベストな場所を探しましょう。
ブースターとして使う
チューブアンプのパワーを出すため、チューブスクリーマーやBOSSのSD-1をブースターに使うことがあります。音が一歩前に飛び出る感じがするので、メタルギターでは定番です。LEVELをマックス、GAINをゼロというセッティングが基本で、ずっとオンにすることも珍しくありません。
それではJCM2000のブースターとして、メタルゾーンは使えるのでしょうか?
以下のようなセッティングで試してみました。
色々試したんですが、メタルゾーンをブースターとして使うことはおすすめできません。で もリードプレイのときでしたら、メタルゾーンのブーストはおすすめです!
LEVEL10時、DISTゼロ。HIGHは10時にしてカットしましょう。HIGHが強いとミスピッキングが目立つので、ミスをごまかす意味があるんです。LOWを3時にすることでリードに太さが出ます。MIDDLEは1時、MID FREQは12時半。これで音が少しマイルドになって、速弾きが滑らかになるんですよ。
ミスをごまかす音作りですが、これも大切な要素です!
メタルゾーンのレビュー・評価
いくら歪ませたいからといって、メタルゾーンはDISTだけを上げてはいけません。LEVELと一緒に上げることで太い歪みが作れるんですよね。最終的な音量はアンプのボリュームで決めましょう。
昔の僕はメタルゾーンが少し苦手でした。どうしてもシャーシャーした音になっていたんですよね。でも十数年ぶりにメタルゾーンを使ったところ、LEVELとDISTの関係に気づきました。どちらも歪み調整のツマミと考えるべきなんですよ。
そして何より僕が伝えたいのは、“メタルゾーン=クソゲー”ということ!“クソゲー”というワードは決してディスる意味ではありません。そこには必ず愛とリスペクトがあるんです!
メタルギター卒業生のアラフォー世代はもちろんのこと、10代の若いギタリストにも一度使ってもらいたいエフェクターです。足元にメタルゾーンひとつでゴリゴリの音を出していたら、僕は間違いなく惚れます。メタルゾーンでゴキゲンなクランチを出していたら、住み込みで弟子入りして音作りのイロハを教わりたいレベルです。
これってゲームと同じで、“低レベルクリア”、“魔法封印クリア”みたいなやり込みプレイですよね?MODだってやり込みプレイのひとつ。
メタルゾーンはBOSSが我々ギタリストに与えてくれたやり込み要素ではないでしょうか?
メタルゾーン(BOSS MT-2)に飽きたら楽器の買取屋さんへ
シュウジさんからメタルゾーンに対する熱い思いをいただきました。クセは強いけどなぜか愛してしまう…そんなメタルゾーンの魅力が伝わります。ちなみに、僕はメタルゾーンを買ってCoaltar of the deepersのような曲を作りましたが、「なんか違う」となり手放してしまいました。
BOSS MT-2は多くのプレイヤーに愛されるエフェクター。買っては売り、売っては買い…そんな経験をしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
どこに売ったらいいか迷った時はぜひ楽器の買取屋さんへお問い合わせください。
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