MARTIN(マーチン)は今日、GIBSON(ギブソン)とともに、アコースティック・ギターの2大ブランドとして君臨しています。その歴史は1833年にまで遡ることができ、まさに「ギターの歴史とともに生きてきた」と言っても過言ではありません。
ドレッドノート・シェイプのボディ、内部のブレイシング構造などギター作りにおける数々のアイデアを生み出し、現在の多くのギター・メーカーにも多大なる影響を与えています。
今回はそんなアコースティック・ギターのトップ・ブランド、MARTIN(マーチン)の各モデルの中で高額買取が期待できるものを紹介していきます。
ギターの買取価格の相場と高額査定のポイントがわかる査定表【2021年最新版】
この記事のポイント
MARTIN D-45の買取相場
「キング・オブ・アコースティック・ギター」としてMARTIN(マーチン)のラインナップでの最高峰と位置づけられ、古今東西多くのギタリストから羨望の眼差しで見つめられるのが「D-45」です。
その誕生は1933年、Gene Autry(ジーン・オートリー)というカントリーシンガーのオーダーから始まったと伝えられています。
D-45は生産時期によって大まかに下記の4つのモデルに分類することができます。
再生産「プリウォー・モデル」のD-45の買取相場
最初期にD-45は1933年から1942年の間にわずか91本が製作された後、第二次世界大戦の影響もあり、その生産が終了します。戦前を意味する「プリウォー」と呼ばれるD-45は、現在世界に70数本しか存在しないと言われ、実際に手にすることはおろか、目にすることさえほとんど「奇跡」に近いと言ってもよいと思います。
実際に入手可能な「プリウォー・モデル」は近年の再生産のものに限られると考えるのが現実的だと思われます。最高品質の木材を使い、プリウォー期の仕様を正確に再現してリイシューされたモデルにはD-45V、D-45Marquis、D-45GE、D-45JM、D-45Authentic 1942、D-45Authentic 1936などがあります。入手困難なプリウォー・モデルに対する人気を背景に、いずれも高額査定の対象となっています。
1960年代に再生産されたD-45の買取相場
このように生産が途切れてしまったD-45ですが、その後1968年に市場に再び登場することになります。しかしその期間は短く1968年〜1969年の2年間で再び生産を終了します。
この時期のD-45には今や希少材となってしまったブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)が使用されており、中古市場でも超高額査定をされるモデルになっています。
「プリウォー・モデル」が事実上入手不可のものであるため、いわゆるビンテージのD-45はこの時期から1970年代のものを指すことが多いです。
また、この時期の仕様を再現した限定モデルとしてD-45 Custom "the 68 Style"があり、2000年代のモデルながら高額査定の対象となっています。
NEIL YOUNG(ニール・ヤング)とD-45
NEIL YOUNG(ニール・ヤング)の愛機として、「OLD BLACK」と呼ばれる黒いレス・ポールと並んで欠かせないのが1968年製のD-45です。彼が参加し、アコースティック・ギターをロックに導入したCSNYはその後の日本のフォーク・ブームに多大なる影響を与え、藤和彦、GARO、石川鷹彦、南こうせつ、伊勢正三など、多くのフォーク・シンガーがD-45を手にすることになります。日本でのD-45に対するある種の「信仰」にも近い人気が確立したのもこの時期です。
1970年代に再生産されたD-45の買取相場
1970年代に入り、使用する木材を変更するなどして生産が続けられたD-45、まだまだ生産本数が少ないとはいえ、実際に店頭などで手にするチャンスがあるのはこの年代からのものとなります。「手の届くビンテージ」としての需要は高く、中古相場でも安定した高値となってますので、査定価格も高額となります。
現在生産中のD-45の買取相場
現在新品でもD-45はスタンダード・シリーズとしてラインナップされ、新品での購入が可能です。もちろん厳選された材料と精鋭の職人のハンド・メイドによりMARTIN(マーチン)のフラッグシップ・モデルとして君臨するモデルとなっています。
そもそもの販売価格が高額な上、国内での人気も安定しているため、他のモデルに比較して購入価格に対してさほど減額されることのない査定となることが多いのがD-45です。
シンガー・ソング・ライターから絶大な人気を誇るD-35の買取相場
1965年に、当時すでに入手困難となっていたブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)を効率的に使用するために、3ピース・バック構造を取り入れたのがD-35です。
効率化のための設計変更だったのですが、その構造による低音が控えめな優しい音色がシンガー・ソング・ライターからの絶大な支持を得ることになります。
D-35の年代別の買取相場を紹介
MARTIN(マーチン)といえばD-45やD-28に代表される2ピース・バック構造というイメージがあるため、どちらかといえば人気の落ち着いているD-35ですが、1965年〜1969年に生産されたD-35には希少材であるブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)が使用されていたことから、やはり他の年代に比較して人気が高く、買取相場も高額になる傾向があります。
また近年のモデルの中では、D-35 Brazilian 50th Anniversary、D-35 Commemorativeといった限定生産モデルが高額査定の対象となっています。
MARTIN D-28の買取相場
D-28は1931年に製造を開始、その後1934年に現在のスタイルに仕様変更され、アコースティック・ギターの絶対的スタンダードとしての地位を揺るぎないものにしています。
装飾の豪華さによる外観の圧倒的な美しさではD-45に敵いませんが、特徴的な「ヘリンボーン・バインディング」はその後の多くのギター・メーカーによって模倣されています。
その大音量とサスティン、きらびやかな高音から力強い低音までバランスの取れた音色が多くのアーティストから支持されました。主な使用アーティストとして、ハンク・ウィリアムズ、ビートルズ、ジョニー・キャッシュ、ニール・ヤング、ボブ・ディランなどが挙げられます。
D-28の年代別の買取相場を紹介
中古市場でも人気の高いモデルで買取価格も安定していますが、中でも「オリジナルヘリンボーン期」と呼ばれる1946年までのモデルは特に高額査定されています。
もとろん、D-45やD-35と同様、1969年までのブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)を使用したモデルは希少材であることから買取相場が高くなっています。
その他、D-28 Authentic 1937 Jacaranda、D-28 Authentic Tortoise Headなど最初期の仕様を復刻した限定生産モデルにはかなりの高額査定が期待できます。
MARTIN D-18の買取相場
ローズウッドを使用することが基本となるMARTIN(マーチン)のラインナップの中にあって、GIBSON(ギブソン)のようにマホガニーを使用しているのが、このD-18です。
デビューは1932年ということでMARTIN(マーチン)の歴史とともにあるともいえるモデルなのですが、市場ではやや地味な位置づけと認識されています。
しかし、きらびやかな傾向のあるMARTIN(マーチン)の中ではややウォームなサウンドがポール・サイモンやクラレンス・ホワイトなどの名手から愛されてきました。
D-18の年代別の買取相場を紹介
「ゴールデン・エラ」と呼ばれる1930年代から、1960年代までのモデルは比較的低価格モデルとされるD-18の中でも上位機種に劣らない高額査定の対象となっています。
また、D-18も最初期の仕様を再現したリイシュー・モデルD-18 Authentic 1939、D-18 Authentic 1940があり、こちらもビンテージ・ギターと同様の高額査定が期待できます。
エリック・クラプトンで大ブレイクしたOOOシリーズの買取相場
「OOO(トリプル・オー)」とはボディサイズを意味します。D-28に代表される「ドレッドノート」比較するとやや小ぶりとなります。近年まで弾き語りのフォーク・シンガーが使用するギターというイメージが強く、どちらかいえばD-18同様「玄人好み」という評価となっていました。
そんな地味な「OOO(トリプル・オー)」のイメージを覆したのがエリック・クラプトンの大ヒットアルバム「アンプラグド」であることは間違いないと言えるでしょう。彼がジャケットで持った1939年製000-42が約60年という年月を経て一躍脚光を浴びることになったのです。
OOOシリーズの年代別買取相場を紹介
もちろん1930年代〜1940年代の「ゴールデン・エラ」期のものが高額査定となることは言うまでもありません。しかしそれ以上の高額査定となる可能性があるのが、OOO(トリプル・オー)人気の立役者、エリック・クラプトンのシグネイチャー・モデルです。
いくつかのモデルがあるのですが、特に高額査定の対象となるのがOOO-45ECJM Eric Clapton、000-42EC-Z "Ziricote" Eric Clapton Crossroadsという極めて小ロットで生産されたモデルです。また、000-28ECは現在も新品で流通しているモデルですが、中古市場でも人気が高く、こちらも安定して高い買取価格を維持しています。
MARTINシグネイチャー・モデルの買取相場
大ヒットしたエリック・クラプトンのシグネイチャー・モデルですが、その他にも中古市場で人気の高いいくつかのシグネイチャー・モデルが存在します。
John Mayer(ジョン・メイヤー)モデルの買取相場を紹介
エリック・クラプトン、スティービー・レイボーンの血統を受け継ぐ名ギタリストとしてのみならず、現代を代表するボーカリストでありソング・ライターとしても評価されるジョン・メイヤーのシグネイチャー・モデルにはD-45 John Mayer Signature、0042JM-C John Mayer Crossroadsがあり、特に高い買取価格となっています。その他OMJM John Mayerも高額査定の対象となっています。
Ed Sheeran(エド・シーラン)モデルの買取相場を紹介
前述したジョン・メイヤーとも親交があり、そのポップな曲作りとルーパーを駆使した「ワンマン・オーケストラ」とも称されるギター・テクニックで多くの音楽ファンを魅了するエド・シーランのシグネイチャー・モデルがMartin Ed Sheeran Divide Signature Editionです。トラベルサイズのリトルマーティンを基に、木材を圧縮して成形した新素材「ハイプレッシャーウッド」を用いたエコなアプローチが若いプレイヤーからも支持されています。
コスト・パフォーマンス・モデルであるリトルマーティンですが、エド・シーランの人気に支えられ、リトルマーティンの中では比較的高い買取価格になっています。
ご存知サイモン&ガーファンクルのソング・ライター、ギタリストであるポール・サイモン。 彼のシグネイチャー・モデルとして500本限定で発売されたのがOM-42PSです。このモデルが高額査定されるのはもちろんですが、ほぼ同仕様でサインが入っていないOM-42も、純粋にはシグネイチャー・モデルではないのですが高い人気で、こちらも高額査定の対象となっています。
本数限定のレアモデルのMARTINの買取相場
MARTIN(マーチン)長い歴史の中では、いくつかの限定生産モデルが発売されています。そのレアなモデルは当然高額査定の対象となります。
NAMMショウ限定モデルの買取相場を紹介
毎年開催される世界最大の楽器展示会「NAMMショウ」においてMARTIN(マーチン)は限定生産のショウ・モデルを発表しています。その希少価値から中古市場での人気も高く、買取相場は高くなっています。
前述した000-42EC-Z "Ziricote" Eric Clapton Crossroads、D-45 John Mayer Signature、0042JM-C John Mayer Crossroadsもこれに当たります。
近年ではそのほかD-42Custom、OM-Arts & Crafts-2018、CTM 000-45、OMSS 2019などが国内で流通していて、いずれも高額査定の対象となっています。
カスタム・ショップ・モデルの買取相場を紹介
そのほかレギュラー・ラインナップを特別な仕様でカスタマイズしたものがあります。
近年のもモデルでは、貴重なハカランダを惜しげもなく使用し、豪華なインレイで飾ったCustom Shop 00-45 Vine、日本限定生産のCustom 0-45、シングルカッタウェイが新鮮なCustom Shop CTM OMC-45などが高額で査定されています。
再評価される80年代の限定モデルの買取相場を紹介
1986年に限定生産されたJ-21MCはこれまでのトラディショナルなルックスではなく、やや扁平したサウンドホールが特徴のリミテッド・モデルです。ロック全盛の時代の中でやや低迷した時期のモデルということで当時の評価は必ずしも芳しくはなかったのですが、MARTIN(マーチン)が向上の規模を縮小し少数精鋭のクラフト・マンに絞って生産した80年代のモデル再評価の流れの中で買取価格が上昇しています。
MARTIN(マーチン)のギターを買取査定に出す際の注意点
MARTIN(マーチン)の場合、実は中古市場では本体だけではなくハードケースも高値で買い取られることがあります。特に人気が高いのは通称「ブルーケース」と呼ばれる80年代まで使用されていたものです。このケースが破損がなく保管されている場合は、査定価格に本体だけではなくケースに対しての査定価格がプラスされることがあるので、ケースも含めて査定に出すようにすることをおすすめします。
限定仕様のギターの場合には認定証などのペーパー・ドキュメント、ビンテージ・ギターの場合は販売当時のタグなどの付属物があると査定価格が上がる可能性がありますので、できる限りそれらを揃えて査定に出すようにしてください。