この記事の監修者:有森 純 税理士
昭和47年群馬県伊勢崎市生まれ、神奈川県横浜市在住。平成7年に青山学院大学卒業後、佐々木哲夫税理士事務所(現在は税理士法人TOS佐々木会計)を経て、平成18年8月に神奈川県横浜市西区に事務所独立開業。
楽器買取の査定額が高額になったとき、あるいはリハーサルスタジオやライブハウスの閉店時に気になるのが税金。確定申告の必要性を気にする方は少なくありません。
結論、ほとんどの場合は楽器買取をしても確定申告不要です。ただし、高額なハープやヴィンテージギターなどを売るときに課税対象になることがあるため注意しましょう。
この記事のポイント
多くの楽器買取に確定申告が不要な理由
通常、ギターやベースなどの楽器を売ったときに確定申告が必要になることはありません。その理由は、楽器の買取価格が50万円を超えることが少ないからです。
まず、楽器を売ったときの収入は「資産(動産)の譲渡による譲渡所得」と税法で定義されています。ここで、2つの法律が関わるため見てみましょう。
30万円未満の楽器は譲渡所得の課税対象外
国税庁のホームページに「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」のページがありました。ここでは、楽器を売ったときの収入について以下のように定義されています。 (1) 生活用動産の譲渡による所得 家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。しかし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個又は1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は課税されます。
ひとつの楽器を売ったときの価額(買取金額)が30万円を超える場合、所得が課税対象になるという意味です。言いかえると、まずは楽器の買取価格が30万円以下なら課税対象になりません。
総合譲渡の特別控除の適用額は50万円
税法では30万円まで非課税という見解でした。さらに、楽器を売って得た収入は総合課税として扱われるため50万円まで特別控除が受けられます。
同じく国税庁のページを読むと、総合課税について説明がありました。 特別控除額は、短期譲渡所得と長期譲渡所得の合計で50万円までです。まず先に短期譲渡所得の譲渡益から控除し、残りがあれば長期譲渡所得の譲渡益から控除します。譲渡益が50万円より少ない場合は、譲渡益が特別控除額となります。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いは楽器を買ってから手元に持っていた年数です。 所有期間が5年を超えているなら長期譲渡所得、5年以内なら短期譲渡所得に当たります。 ただし、どちらの場合でも50万円の特別控除が受けられます。
楽器を売ったときの収入は総合譲渡という項目になり、控除が受けられます。楽器の買取価格が50万円以下なら税金がかからないのです。
楽器買取で確定申告が必要になった事例
楽器の買取屋さんは楽器の買取価格が50万円を超える複数事例がありました。この場合税金が発生します。また、1回の買取価格が50万円以内でも確定申告が必要になることもあります。
所得税の義務があるのに確定申告を怠るとあとからの支払いや延滞税が発生するため損をします。楽器買取によって税金がかかることがわかったら必ず確定申告してください。
楽器の買取価格が50万円以上
楽器の買取価格が50万円を超えるため特別控除の対象を外れる事例です。
クラシックギターやハープのように定価が高い楽器は買取価格も高くなりやすいです。一方、ヴィンテージのアコースティックギターも50万円を超えることがありました。
Hermann Hauser III(クラシックギター)
ドイツのルシアー、ヘルマン・ハウザー3世が製作したクラシックギターHermann Hauser IIIは946,800円の値が付きました。 ハカランダ材のボディやライシェル製の白蝶貝の糸巻など、部品自体も非常に高級です。 状態も非常にきれいで文句なしの逸品でした。
1点で約100万円は楽器の買取屋さんでも珍しいです。腕のよい職人が最高級の部品で作ったクラシックギターは高く買取できます。
Hermann Hauser III/ヘルマン・ハウザー3世 ガットギター/クラシックギター No299 1992年製
青山ハープ オルフェウス(ハープ)
日本唯一のハープメーカー、青山ハープのハープは630,000円で買取しています。保証書やチューニングハンマーなどの付属品もあり、使用感も少ない美品でした。
楽器の買取屋さん以外の査定業者さんにも相見積もりしたようですが、当店のほうが高額査定だったようです。お客様からは大変喜んでいただけました。
青山ハープ AOYAMA ORPHEUS Model 46A DB オルフェウス ペダルハープ
Martin D-18(アコースティックギター)
1946年製のMartin D-18は605,000円の値が付きました。 製造から約75年(2020年時点)のヴィンテージギターです。楽器の状態も非常によく、高価買取ができました。
Martin D-18 1946 マーティン
なお、ギターを高価買取するためのポイントは理由は「ギターの高額査定のコツ」のページで詳しく紹介します。高価買取を希望する方はぜひご一読ください。
関連ページ:【相場】ヴィンテージギターの買取価格!Fender・Gibson・ジャパンヴィンテージの査定事例
50万円の特別控除対象外になる例
楽器買取の特別控除50万円は、あくまで個人売買かつ1回売った程度のときに適用されます。
事業として楽器その他の売買を営んでいる方、年間で50万円以上動産(楽器だけでなくカメラや美術品など)を売った方は控除の対象外です。そのため、税金の支払い義務が発生します。
繰り返し楽器の売買をしていたり、遺産相続などで複数の楽器その他動産を引き継いだりしたときは、税金の対象になる可能性が高いです。
事業譲渡に該当したり特別控除の対象の範囲を超えたりと、実は所得税の課税対象になっていることがあります。 楽器の買取価格が50万円を超えていないから必ず税金の支払い義務がないわけではありません。
楽器の買取価格が高額になったときは税理士さんに相談してみるのもよいでしょう。
楽器の買取価格が50万円以上なら税金の対象
多くの楽器は買取価格が50万円を超えることはありません。税金の支払いが心配な方はご安心ください。 しかし、楽器の買取価格が50万円以上になる場合、所得税の納付義務が生じます。
確定申告が必要になるため、自分で手続きするのが難しいなら税理士さんに相談するとよいでしょう。
今回ご紹介したように、楽器の買取屋さんでは50万円を超える高額査定事例が多数あります。税金の支払いが心配になるくらいの高価買取を実現。ぜひお問い合わせください。